『ろまん燈籠 (新潮文庫)』
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戦時下の困難な時期、太宰の文学はもっとも豊饒な季節を迎えた。
昭和16年から19年に書かれた16作品を収録する。
小説好きの五人兄妹が順々に書きついでいく物語のなかに、五人の性格の違いを浮き彫りにするという立体的で野心的な構成をもった「ろまん燈籠」。
太平洋戦争突入の日の高揚と虚無感が交錯した心情を、夫とそれを眺める妻との画面から定着させた「新郎」「十二月八日」。
日本全体が滅亡に向かってつき進んでいるなかで、曇りない目で文学と生活と戦時下の庶民の姿を見つめた16編。
目次
ろまん燈籠
みみずく通信
服装に就いて
令嬢アユ
誰
恥
新郎
十二月八日
小さいアルバム
禁酒の心
鉄面皮
作家の手帖
佳日
散華
雪の夜の話
東京だより
解説 奥野健男
本書「ろまん燈籠」より
かれらは時々、物語の連作をはじめる事がある。たいてい、曇天の日曜などに、兄妹五人、客間に集っておそろしく退屈して来ると、長兄の発案で、はじめるのである。ひとりが、思いつくままに勝手な人物を登場させて、それから順々に、その人物の運命やら何やらを捏造していって、ついに一篇の物語を創造するという遊戯である。
本書「解説」より
困難な戦争期、これほど旺盛に、しかも内容の深いすぐれた作品を書き続けた文学者は、ほかにいない。しかも決して国家権力や軍国主義の状況に迎合した御用文学ではなく、芸術的な秘かな抵抗であった。太宰治など不屈な少数の文学者によって日本文学の伝統は、あの異常な戦争下も火をたやすことなく継承されたと言っても、過言ではないだろう。
――奥野健男(文芸評論家)
太宰治(1909-1948)
青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。